みなとみらい司法書士事務所
 
 



免責制度の実際

免責制度の近年の傾向

免責不許可事由

免責不許可事由の検討
1.財産の不利益処分
2.
商業帳簿作成義務違反
3.浪費・賭博
4.破産原因と詐術

 











 自己破産 免責不許可事由の検討 4

破産原因と詐術

 破産者が破産宣告前1年間に、破産の原因たる事実があるのもかかわらず、その事実がないことを信じせしめるために、詐術を用いて信用取引(借用)によって財産を得たときは免責不許可事由に該当する。

 この場合は、いつの時点で多重債務者が支払不能の状況に陥ったかが問題となる。破産申立ての際に添付する陳述書にも、「借金を完済する目処がつきそうにないと思い始めた時期」と「上記時期以後に借入れまたは生じた債務」という質問事項が記載されている。また、免責に対する陳述書においても「氏名、生年月日、他社借入額等を偽って借入したことの有無」という質問事項があり、これに回答する形式になっている。

 多重債務者が借金の返済のために他の消費者金融より融資を受けるのは常態である。支払不能に陥った後、これを黙秘して債務負担行為をした場合、詐術に該当するかどうかが問題である。積極的に嘘を言わなくても、黙秘していたことにより詐術を用いたことになるので免責不許可とすべきである、とする見解があり、支払不能の状態にある債務者の借入申込自体、不作為による詐術または返済能力のある旨のも黙示の陳述にあたるとする判例もある(大阪高決昭和58・9・29判タ510号117P他)。

 しかし、事例は若干異なるが、最判昭和44・2・13(民集23巻2号291P)は「無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたときには民法20条にいう詐術にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にはあたらない」と見解を示しており、むしろ近年ではこの見解に沿う考え方が有力で、判例としても現れている(大阪高決平成2・6・11・判時1370号70P)。

 消費者金融の窓口で融資する際にも、資金の使途を知りながらレジャー資金などと記載するよう求める業者も多く存在しており、また、信用情報がある程度整備された現状においては債権者には高度な信用調査義務があると考えられるところ、契約書に記載されている資金使途、資産、年収等が事実と相違しているだけで詐術と判断するような例(仙台高決平成4・10・21判タ806号222P他)は、消費者金融業者の信用調査能力との均衡から公平を欠くもと言わざるを得ない。

 この点で、勤務先・収入等を偽って知人の依頼により借入をした債務者が、当時病気により知能低下を起こしており知人の依頼を拒否するのは酷に過ぎること、現在も療養生活を送っていることなどを考慮して裁量的に免責を許可したのは妥当であると考えられる(静岡地決平成6・12・22消費者法ニュース27号36P上段)。

 また、収入などの虚偽の深刻による借入の一因には他の債権者の過酷な取立により招かれた事情などを考慮して裁量的に免責を許可した事例(静岡地決平成6・12・22消費者法ニュース27号36P下段)も債権者と債務者の均衡を考慮したものといえよう。さらに、借入れの際に年収・他社借入額を偽っていたとしても、過去にも取引があって債権者において過去の返済状況なども勘案できる事情があったため、裁量的に免責が許可された事例もある(神戸地尼崎支決平成8・3・11消費者法ニュース27号43P)。

 このほか詐術が問題となる場面としては、自動車、着物等架空のクレジット契約により、そのような商品を購入せずに販売業者から資金を得たり、商品の価値に対し著しく高額なクレジット契約を締結することにより金融手段を図っている例も見受けられるが、このような契約を締結するためには販売業者に協力が不可欠であり、むしろ販売業者の主導のもとに行われていることが多いという実態がある。そのような実態に鑑み、販売店に利用された側面がある事などの事情を考慮して免責を裁量的に許可した事例も存在する(岡山地決平成8・4・5消費者法ニュース28号78P)。

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